第73章 ♑瞳を閉じても②（赤葦京治）完結

そして…
"何かの間違えだ"って
言われたかった

その相手は
この人であるわけ無いのに

本当にバカだな、俺は。

「へー、喧嘩したんだ
てか、別れちゃったんだ、彼女と
赤葦くんでも振られたりするんだね」

脈絡なく話す俺の話に
相槌を打ってたナナさんが

「フリー宣言してくれたって事は
期待しても良い感じ、なのかな？」

少し距離を詰めて来る

「チャント聞いて無かったのか？
未練しかないのに
期待されても困る」

「えー！未練を断ち切るには
次の恋じゃない？？
相手に困らないのも運命だと思うけど？」

「話にならない。
運命なんて早々転がってないから
価値がある…」

そう唇を動かし
少し苦しくなる

運命だと思ってた
歪なんか生まれるはずのない
ピッタリ合った貝のように
結ばれる事が決まってたと
思えていたのに…

姫凪さんの運命の相手は
俺じゃなくて…

フワリと浮かんだ
木兎さんの姿を

『京治！』

掻き消す姫凪さんの声