第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
"浮気"
そのワードは今の俺には
一番キツい言葉で
「話題選びましょうか?
空気読むのは
それ程難しくないでしょう?」
相手が女性だと言うのに
低くキツくなる声
「怖くないよ、そんな顔で…
そんな泣きそうな顔で凄まれても。
ねぇ、なんでそんなに
自分を責めてるの?
そんな顔で家に帰って
一人で居るなんて
辛いだけじゃない?
ね、話そうよ
思いっ切り発散するだけでも
違うと思うよ、私!
ほら、自販機あるし
特別に奢っちゃう!
レアなんだよ、私が男に奢るとか!」
我ながら声も低けりゃ
目付きも悪かっただろうから
てっきり怯むと思ってたのに
ナナさんは
更に距離を詰めて来る
少し重なってしまった
ハッキリ、まっすぐ
俺を見て話す姿
可愛こぶるわけじゃないのに
「強引かよ
てゆっか、飲み物なら
さっき買ったばっかり」
「え!?あ!コーヒー!
何よ!空気読んでよ!
口実無くなったじゃないのよ!」
仕草に可愛げがあって
放っとけない
そんな空気が
姫凪さんと。