第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
"イヤ"なんて聞かないとでも
言いたげな
鋭い視線に
震える身体
色気に
引っ張られそうになる意識を
携帯のバイブ音が
現実に引き戻す
「…見んなよ
俺に集中しろ」
音に重なる光太郎の声と
優しい指先
『でも…きっと…』
そう、きっと
あの音を鳴らしてるのは
『京治からだから。
お願い、離して』
私の一番好きな人だから…
「…分かった」
少し考えた後
光太郎は私を解放する
携帯を鳴らしてたのは
LINEの通知で
[姫凪さん
もう寝てますか?]
いつもの京治らしい
簡潔な文章
今から帰って寝るって
作ろうとした私の指先を
「相変わらずだな
赤葦っぽいメッセージ」
画面を覗く光太郎の声が止める
帰るって送れば
京治が家に来るかも…
「で?姫凪は
なんて送るわけ??」
『…静かにして、光太郎…』
逢ったとして
私はなんて言うの
何を言うの
光太郎の部屋に来た事を…
キスされた事を
京治に……知られたくないけど
嘘をつくのは…。