第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
震える指が
打つ文字に迷っているのを
察してか
「貸せ。
お前が送れないなら
俺が送る」
光太郎が携帯を取り上げる
『待って、光太郎…』
「帰るって送らないって事は
…こういう事だろ?」
[うん、今日は疲れたから
もう寝るよ]
光太郎に作られた
私っぽいメッセージは
あっという間に送られて
既読マークが付く
「寝ようぜ、姫凪
全部真っ白になるまで乱れて、さ」
抱き締められた身体
片手間でやり取りされる
メッセージ
震えなくなった携帯を
放り投げ
「姫凪、おいで」
再び私を押し倒す光太郎
頭が回らない
早く帰らないと
さっきついた嘘を
本当にしないとダメなのに
また喉も身体も
時を止めてしまう
力の入った光太郎の腕
大きな手のひらが
ユックリ頭へ回って来る
もう一度深くキスされたら
今度こそ戻れなくなりそうで
必死に動かそうと力を込める身体
「姫凪…」