第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
ピリッとした空気を察して
咄嗟に笑顔を作り
『私もきっと疲れてるんだよね
そろそろ帰って寝ようかな』
夜景に背を向ける
「…俺ん家来るか?」
『え?何言ってるの?
行くわけ無いでしょ!
何考えてるのよ、エッチ!』
ぶつかる声にわざと
戯けて返すけど
「オマエの事、考えてる
つーか、オマエの事しか
考えてねぇ」
光太郎からは
真剣な声が返って来るだけ
『止めてよ
光太郎と二人切りは
いくらなんでも京治が嫌がる
帰ろう?
チャント送ってくれるんだよね?』
絆されたくなる気持ちを
必死に笑い飛ばして
止めた足をまた動かす…けど
「送る。
オマエの涙が枯れたら
来いよ。
今更襲わねぇって
絶対、約束」
大きな胸に
背中は引き寄せられる
『止めてよ…
行かないよ…
光太郎の絶対は絶対じゃない…』
違う
絶対じゃないのは
『離してよ…』
「嫌だ。
姫凪…何でも聞いてやる
オマエが笑えるなら
何でもしてやるから
…泣くな、バカ」
私の方だ。