第73章 ♑瞳を閉じても②(赤葦京治)完結
「やった!
シャンプーは…
姫凪ちゃんがしてくれるなら
して欲しいなー」
相変わらずの懐っこい笑顔で
私の顔を覗き込んでくるアキラさんに
『いや…マッキーに…』
上手く笑顔が作れない…じゃ
さっきまでと変わらないじゃん!
怒られたばっかなのに!
今は仕事中
今は仕事中!!
「俺今からパーマの補助でーす」
「じゃあ、姫凪ちゃんお願いします」
『は…はぁい!
こちらへどーぞー』
頭の中の余計な事なんか追い出して
チャントしないと!
営業スマイルと空元気で
アキラさんをシャンプー台に通して
準備を進めていく
座席を倒して
顔にタオルを乗っけて
程よく暖かくなったお湯で
髪の毛を流していく
『痒いところはございませんか?』
「ないよ」
『では、流しますね~』
モコモコ泡立ったシャンプーは
家の香りとは違うのに
昨日の夜のバスタイムが
思い出されて
また気持ちが落ち込んで
タオルでお客様に顔が
見えないのを良いことに
眉毛がユックリ下がっていく