第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
少し気まずかった空気も
家に着く頃には
お互いいつも通りで
当たり前の様に甘い夜を
見据えて疲れと埃を落としていた
「姫凪さん、次どうぞ」
『あ、うん!
シチュー煮込んでるから
お鍋見ててね
行ってきまーす!』
「ハイハイ」
姫凪さんを見送り
鍋を覗くと
湯気がお腹の虫を煽って来る
「お皿、用意しておこうかな」
お揃いの食器が
どれも二つずつ揃って並ぶ
食器棚に自然に頬が緩む
洋食なメニューにあわせて
食器を用意して
たまに鍋を掻き混ぜて
メインの魚料理のソースを
味見する
昼ごはんは味の半分も
感じなくて食べる気もしなかったし
実際半分以上は治に食べられたし
早く食べたいな
「あ、ワイン…
確か前に買ったのがあったはず…」
宅飲みの時に買い込んだ酒の中に
ワインがあったのを思い出して
ワイングラスも用意する
ソワソワ待っている時間も
悪くない…のですが
チョット遅すぎないか?