第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「要らない…」
「なら捨てるだけでしょ?
突き返すのは紳士じゃないよ
じゃあね、赤葦くん」
突き返そうとした手を躱され
先にブースに戻ってしまう背中
「…やられっぱなしとか
厄日なのか?」
仕方なく持ち帰り
自分のブースのゴミ箱にでも
捨てるつもりだった
[終わったよ]
姫凪さんからのLINEが
届くまでは
[スグ店の前に向かいます]
慌ててメッセージを返して
ネットカフェから飛び出す
ズボンに押し込んだ携帯に
捨てるはずだった
紙がくっついてるなんて
気付けなかった
それが俺と姫凪さんに
大きな溝を空ける事になる事も。
「待ちましたか?」
『全然だよ
…買い物して帰る?』
店の前まだ少し
ご機嫌ナナメな姫凪さんの
手を握り
「そうですね
外食並みに張り込んで
豪華な夕食にしましょうか」
『太りそう…』
「その後いっぱい動くから
太れませんよ」
ユックリ軌道修正を計る
誤解なんかすぐ解ける
俺達の絆は
思ってる何倍も硬いんだから