第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「違います、さよなら」
「あーん、待って待って!
彼女と合流前の暇潰しでしょ??
私も暇な人なの
オススメの漫画とかあったら
教えてくれない??」
声を抑えながらも
距離を縮めてくる図々しさは
一向に抑える気配はない
ピタリとくっつき
「大きな声だしたら
追い出されちゃうから
シーッ、だよ?」
俺の耳に声を落とす
不快極まりない。
甘過ぎる香りも
馴れ馴れしい行動も
「ね?あの後
彼女大丈夫だった?
勘違いされたまま…な、わけないか
待ち合わせしてるくらいだしね~」
痛過ぎる質問も
「アナタに関係ない
ブースに戻るんで
ついて来ないで下さい」
待ってる時間を更に
長く感じさせる物でしかない
振り払う度に
絡まる腕が指が
「赤葦くんって
見た目よりドライじゃないんだね
分かりやす過ぎるよ
悩みがあったら
相談してよ、コレ番号」
俺の手の中に
握らせた十一桁の番号と
LINEのID
そして名前が書かれた紙