第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
心臓はドクドクと
慌ただしく音を立てて
首を締められているみたいな
苦しさは取れてくれない
俺、どこかオカシイのか?
木兎さんと姫凪さんが
イチャついていても
こんな気持ちになった事は
なかったのに
そりゃあ妬きはするし
暴走する事も
少なくないけど
こんなに不安になったのは
いつ以来だったか
思い出せない程
昔の話に思える
まだ鳴るはずのない携帯のロックを
何度も外しては
アプリを開いては落としてを繰り返す
「駄目だ。
逆に騒がしい所に行くべきだったな」
ドリンクバーの設置された
ブースへ足を進めながら
胸を占拠する
重過ぎるため息を吐き出してると
「あれ?赤葦くん?
一人…だよね?」
昼の忌まわしい記憶を
蘇らさせる声が聞こえて来る
「またアナタですか」
つい数時間前
姫凪さんに誤解を植え付けた
張本人が振り返ったら
立ってるとか
「すっごい偶然~
もしかして運命じゃない?」
偶然の再会だとしても
悪趣味過ぎますよ、神様。