第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
「治?お前今日は
学食やのーて
外に飯買いに行くって
言うてなかったか?
…って、お前…タイミング…」
見る見る顔の青くなる
宮侑に、てっきり
侑の彼女が来たのかと思ってた
でも、現実は
『これ、どういう事?』
「は、ぃ?」
振り返った先には
居るはずのない
姫凪さんの姿
「え!?なんで…!?」
『昼休憩早く貰えた…
ご飯買いに出た所で
たまたま治くんと会って…
コッソリ中に入れてくれるって
言うから…差し入れ持って来たんだけど…』
明らかに気分を害した顔して
『お邪魔だったみたいね。
楽しそうじゃない
……治くんにあげる
私、戻るから』
背中を向けて走り去ってしまった
「姫凪さん!
治、残り食べててくれ
その差し入れを食べたら許さないからな」
「…お、おう」
慌てて後を追うものの
見失った背中
電話を掛けても
LINEを送っても
繋がらない
「まいったな…
嫌な予感しかしない…
店に押し掛けるのは非常識…か」