第72章 ♑瞳を閉じても(赤葦京治)
止まった足が
鉛でもつけたみたいに重いけど
午後からも講義はある
トボトボ来た道を引き返し
学食のあの席に戻ると
女子の姿はなく
「スマンな、赤葦…
コレ、姫凪からの差し入れ」
宮治だけが
ポツンと座ってた
「一人か?」
「おん。
侑はオンナに言い訳しに行った
他は知らん。
無視しとったらどっか行った」
マイペースに食い続ける
宮治からコンビニの袋を受け取ると
姫凪さんの好きな
スイーツが二つ
一緒に食べようとしてくれたのかな
疚しいことはない
間が悪かった
誤解されただけだといえば
それまでなんだけど
傷付けた事に変わりはない
「スイーツの見張りありがとう」
「別に。
飯貰ろたし、かまへんよ
ごっそーさん」
ペロリと平らげた
ボリューム満点の食事の食器を
片しながら
「電話、早い方がエエんちゃうか?
社会人って昼休み終わったら
携帯ユックリ触ってられんやろ?」
ソワソワしてる俺の背中を押す