第70章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋⑥(宮侑 治)
早く逢って
早く話して
ほんで…ほんで!
焦る俺のポケットで震える携帯
[治くん
屋上に来れる?]
緑に縁取られたメッセージ
やっぱり屋上やった!
これから行こうとしとった所に
逢いたい女が居って
来てくれって言われて
以心伝心?なんて浮かれて
[秒で行く]
速攻で返すメッセージ
空回りそうな足で駆け上がった階段
扉を開く手が
「…侑呼び出す程
苦しいなら…俺にしとけば
良いじゃんか…
俺の事は浮かばなかった?」
意外な声で止められた
は?角名が居るってどう言う事や?
いや、その前に
侑呼び出したってなんや?
聞いてへん。
「治なんて止めとけよ。
そんな顔させる奴なんて
お前に似合わないよ…」
そんな顔ってどんな顔や?
どんな顔して
どんな事を侑に話したん?
聞き耳を立てても
相談の内容も
なんで侑を呼び出したのかも
分からへん。
角名がなんでサクラと居るのかも
なんで侑と居った事知ってんのかも
なーんも分からんくて
パニックになりそうになる。
せやけど…
確実な事がある。