第69章 咲く恋、散る恋、芽吹く恋(宮侑 治)⑤
先を歩く背中にしがみついて
猫なで声でオデコを擦り付けると
「…抱くには足らんわ」
冷めた声が頭の上に落ちて来た
一瞬ゾクリと背筋が震えて
慌てて回り込み見上げた先には
「続きは家でユックリな?
角名の匂い塗りつぶせるまで
抱き潰すから覚悟しときや?」
イタズラな笑顔
ほんの少しホッとするも
ザワザワとまだ落ち着かない心
「お前は悪ないから
ごめんやで、サクラ」
優しい声が痛い
告白も断った
私が治くんを信じるのも
治くんが私に優しいのも
なにもかも昨日と変わらないのに
「治くんは悪ないやん
チョット角名くん
甘やかし過ぎた!
今度から他の子に借りてって言うな!」
「ホンマそれや!
妬くやんけ、ぼけぇー」
笑顔の自分達が
辛くなるのは
なんでかな…