第23章 水色の思い出 (逆ハー)
海に入ろうか呼びかけようとして振り返ったは、思わず息を呑んだ。バージルがボトムパンツを脱ぎ、シャツのボタンを外している。
合間から覗いたのは、太陽に当たった事がないのかと問いたくなる程真っ白な肌だった。普段の室内であれば半ば青白い気がするのだが、太陽の元ではただただ眩しいほど白い。
細く繊細な線を描きつつも無駄のない引き締まった身体は、生身の身体だと思えない。まるで世界一美しい彫刻のように、凛とそこに佇む存在。
思いがけず目を奪われて絶句し、バージルと目が合った。
「どうした?」
が目を奪われているのを知ってか知らずか、笑いながら言う。その声にハッとし、慌てて自分も服を脱ぎにかかった。
ボトムだけを脱ぎ、上はパーカーを着ている。少しだけ前を開けようとファスナーに手をかけた。
「脱がせるか?」
「大丈……うあ」
どこか生地を噛んでしまったのだろう、ファスナーが硬くてなかなか下りない。
焦って力任せに引っ張るがびくともせず、こんな時に、と悪態をつきたくなった。
ふっと前が陰る。
「あまり無理に引っ張るな。服が傷む」
バージルが目の前に立ち、ファスナーを掴むの手をやんわりとどかした。
目の前の肌に固まる。顔を上げようとしたが距離が近い事に気付き、思い留まった。
しこの状況で緊張しない女などいないだろう。視線を少し上げれば完璧に整った顔。銀色の睫毛に縁取られて宝石のような瞳。
が硬直している間にバージルは易々とファスナーから噛まれた生地を外し、後ろに手を回してパーカーを脱がせた。
「バージル…パーカーは着てる約束…っ」
「いいだろう。こんな日くらいは」
「よくな…」
パーカーを着てていいと言うから来たのに。肌が晒されて風が撫でていく。
卑怯だ。今のにはその手を拒絶する気持ちは起きなかった。
ゆっくりと、焦らすように脱がせるバージル。生地が滑っていく。
ともすれば抱き合うような構図。
視界の端にバージルの肌が見え、自分の身体をかすめ、それだけで魂が抜かれそうな程痺れる。触れる肌から伝わる熱が麻薬のようにを縛る。
「………ありがとう」
そう言うのが精一杯だった。