第2章 気づき
「お前の思いを素直に家康に伝えたららどうだ。」
「言えません…………」
さらに赤くなるひいろを見て、俺は少し、ほんの少し、なぜだか苛立った。
「そんなに赤くなるな、生娘でもあるまいし。」
俺のその一言に、ひいろが反応した。
「確かに生娘ではないけど…好きな男に抱かれたことはありません……。」
少し切なそうな顔をして、ひいろは俺から目線を外して答えた。そんな答を予期していなかった俺は、一瞬眼を見開いて、ひいろを見つめた。
一瞬の沈黙
「光秀様……私…………。」
「お嬢様!」
ひいろが口を開くのと同時に、番頭の声がする。見ると、店の暖簾を上げ、番頭が姿を現した所だった。