第20章 動く2
「いつのことだ」
「巳の刻あたりのことです。血痕はその場のみだったので、止血はされていると思いますが…」
「向こうもひいろに死なれては困るからな。命はあるだろう。……が、急ぐ必要はあるな」
「はい」
三成の眼の力が強くなる。この男のことだ、すでにいくつかの道筋は立てているのだろう。だが、ひいろは手傷をおい、相手の手の内にいる。そしてことねも。抑えていた怒りと焦りが、じりじりとこの身を熱く焦がしはじめる。
「ことね様の素性が知られぬよう、騒ぎ立てず表立った捜索は控えています。ひいろさんが傷を負っていることを考えれば無理に動かすこてはないでしょうから、領内に重点を置き人を向かわせています」
「それが良いだろう。ひいろは大事な駒だ、傷が落ち着くまではそう遠くへは動かさないだろう。ことねにしても、顕如が知れば何をされるか分からないからな」
「はい。ただ、顕如はことね様の顔を見知っています」
「会ってしまえば、それまでか」
「早く探し出さなくては、お二人が……」
難しい顔をした三成が口を閉じる。