第20章 動く2
「二人が拐かされたのは間違いないのか」
「はい。ことね様が仕立ての品をいつもの店に届けた後、ひいろさんを訪ね外へ連れ出したところを狙われたようです」
「ことねにはひいろの件は何も伝えていないからな。大方、先日のことを話そうと急に押しかけたのだろう」
「そのようです。ひいろさんは突然の姫様の訪問に慌て、側にいた小僧のみを連れて出たそうです。その小僧が助けを呼び、拐かしが判明しました」
歩みを進めながら話していた三成の足が止まる。連れて足を止めると、三成の表情が曇る。
「光秀様」
「なんだ」
「ひいろさんが斬られました」
小さく息を吸い込んだまま、眼を閉じる。血に染まるひいろの姿が一瞬脳裏に浮かび、怒りを押さえ込むように腹の底に力を入れる。
「……庇ったのか」
「はい。刃を向けられた小僧を庇おうとしたことね様の前に出て、斬られたそうです」
「無事なのだろうな」
「傷の程度は分かりませんが、残された血痕から致命傷ではないと家康様が…」
「そうか」
「斬られた後、小僧に走れと叫んだそうです。小僧もすぐに人を呼び戻ったそうですが、間に合いませんでした」