第19章 偵察
部員の人の声が聞こえた。前を向くと、目の前にバスケットボールがあった。
「っ…!」
きっと、誰かが投げたものだった。確実に顔に当たる。そう思い、目を思いっきり瞑った。避けられなかった。
「あっ…ぶね…!」
ボールをキャッチした音が聞こえた。そして、誰かが呟いた。
恐る恐る目を開けると、白いシャツが見えた。
「は~!危ねぇ…怪我してねぇか?」
「!…」
そこにはボールを持っていた高尾がいた。
「っあ…。」
「お~い、だいじょぶか~?」
顔の前で手を振られた。
「あ…だ、大丈夫…。ゴメンね…ありがとう…。」
「おう。おい、気をつけろよな~!」
「悪ぃ…。」
部員の人が誤って投げてしまったらしい。
いきなりのことで驚いてしまい、聞かれた時に咄嗟に声が出なかった。
「ん。ゴメンな?菜月。」
「あ…ううん。私も…ボーッとしてた…から…。」
あのタイミングで、瞬時にボールが取れたのは、凄い反射神経だと思った。
「いや?菜月は何も悪くねぇけど。」
「…」(呼び捨てだ…。)
「ん?どした?」
「…高…君…。」
「!…」
「ありがとう!」
私は微笑んだ。
「し…真ちゃん…俺やべぇ…俺…死ぬ!///////」
高尾が真っ赤な顔をしていた。
「フンッ!今更菜月の良さに気づくなど遅すぎるのだよ。それにダメだ。コイツは俺のだ。」
そう言うと、緑間は私の腕を掴んで抱きしめた。