第7章 4,5(大和視点)
複雑…ね。
俺らも訳ありで集まってるようなものだし、似たようなもんだ。
『スカウトされたのは事実です。でも私はアイドルになる気なんてなくて…歌だってあんな声で』
話す気になったのか、俺は黙って聞くことにした。
でも音無の表情は暗い。
『事務員になったのは3ヶ月って条件ですし、その間に社長がどう動くかわからないし…デビュー前まではなるべく男として振る舞うようにって…』
「男に?」
『初めて会った日に男だと勘違いされたんです。こんな感じで』
音無が前髪を下ろした。
綺麗な黒髪だなとは思ってたけど、下ろすと雰囲気が違う。
「男に見えなくもないな。でもお兄さんはこっちの方が好きかも」
音無の髪に触れて元に戻してやる。
……音無の顔が赤い。
もしかして免疫ないのか…?
『………』
「ふーん…その年になってから評価されるなんてことなんて珍しいことじゃないしな」
男として振る舞うって男装アイドルとか考えてるのか?
それじゃあ事務員としている彼女はどうなるんだ?
「つまり性別非公開でデビュー予定だったってこと?」
『はい…社長からもIDOLiSH7には秘密って言われてます…なのでこの事は内密に…』
「やだ」
反射的に声が出た。
面倒なことに自分から突っ込むタイプじゃないんだけどなあ。
『やだって子供じゃないんですから』
「こんな面白そうな事お兄さんも混ぜなさい」
『はい?』
「知らないフリしててあげるからお兄さんの言うこと聞いてくんない?」
『なんですか』
「俺のこと二階堂さんって呼んでたよね。アレやめて」
『え、でも年上ですし…』
「俺がイヤだって言ってんの。あと敬語も」
音無が壁作ってる感が否めない。
押しに弱そうだし、攻め続ければその壁もすぐ壊れそうだな。
『他の人に聞かれたら確実に何かあったかって聞かれそうな事案なんですが』
「そう言うことにしておけばいいじゃない」
逆に好都合。
隠し事なんて慣れてるし。