第38章 女子力ってなんですか
薬研「何が入ってるんだ?」
「草履だよ。燭台切さんと買い物するときとか遠出するとき用に買ったの。今のやつはお庭とか出るときとか……この本丸の近くだけで履こうかなって」
薬研「あぁ……あの背丈を高く見せようとしてるあれか」
「し、身長は関係ないから。たまたま好みの草履がたまたま、厚底ってだけで……そう、たまたま……」
薬研くんから目をそらすと、次郎さんと長谷部が私たちのことをじっと見ていた。
長谷部「薬研が五尺だとすれば主は……」
次郎「四尺と九寸ってところだね……」
「な、なに話してるの……?」
薬研「あぁ多分、大きさ……わかりやすく言うとだな……背丈の話だな。わかるか大将?」
いや、わからない。
薬研君の方をみて私は現実から目を背けたくなった。
鯰尾くらいの身長なら薬研君を見下ろせるはずなのに……
「薬研君……背、伸びた?」
刀って成長するのかな、何て思いながら薬研君にそう聞くとなにか可哀想なものを見るような視線を向けられた。
薬研「……大将が自分の背丈のことを、気にしてるのは知ってるが今のままでも十分魅力的なんだ。なのにこれ以上、綺麗になって俺を夢中にさせてくれるなよ大将」
「ぅッ……き、にしてるけど……け、どぉッ……」
なに言ってるんだ、くらい思えたらいいが、すごい、ドキドキする。
相手は短刀だ。
あるじさまって可愛い笑顔で笑いかけてくれるあの短刀達と同じで……
薬研「そんなに見つめられるとさすがに照れるな」
「ご、ごめんっ」
薬研「まあ、大将みたいな綺麗な娘に見られて悪い気はしないがな」
「ぬ、ぅッ……」
なんだこの短刀詐欺の代表みたいな刀。
姿は中学生みたいな感じではあるのに、その低い声に惑わされそうになる。
落ち着こう……こんなところで体質に悩まされたくない。