第30章 仲直り
長谷部「……なら、ここに……俺たちとずっとここにいてください」
やっと告げられた言葉に私は首を傾げてしまう。
「そんなことでいいの……?」
もっと難しいことを言われるかと思っていたので拍子抜けだったりもする。
ずっとここに……。
長谷部がそう望んでいたとしても他の刀剣達もそうしてほしいと思っているかはわからない。
私には見てないからわからないが前任の影響で審神者を嫌っていたり恐れる心はきっと残っている。
そんな彼らのそばに私がいることでつらくなるのではと思ってもしまったが私は決めているのだ。
「いいよ。ずっと……この命尽きるまで私はここで審神者をやり続ける……」
ここで生き、ここで死ぬ、と。
政府の人が与えてくれた居場所と死に場所。
彼らのために生き、そして死ぬ。
今の私ができるのはそれだけなのだ。
「もし、私がその約束を違えようとしたとき、問答無用で切り捨ててくれて構わないよ」
長谷部「わかりました。そんな日が来たときは俺が必ず……」
私は小さく頷くと手を差し出した。
これは仲直りという意味と約束を守るという意味を込めての握手だと私は考えている。
長谷部は私の方を見てから手を握り返してくれた。
私は笑顔でぶんぶんと手を振るが、こうでもしないとまた意識してしまいそうになるのだ。
「そ、それじゃ長谷部。さっき言ったように私はお部屋にこもろうと思うの。だからあとのことは……」
長谷部「はい、この長谷部にお任せください」
手を離すと今度はなるべく目を合わせないようにした。
もちろん、意識しないように。
「編成とかは私がやるし大事な用があれば言ってくれたらいいから。それじゃ」
なるべく笑顔でそう告げると私は立ち上がってすぐに背を向けこの場から立ち去ろうとした。
それももちろん、長谷部を意識しないため……だ。
はっきり言ってしまうと決して長谷部が苦手だとかかっこいいから私が耐えられないとかそういうことではないのだ。
努力次第ではこの体質も出てこなくなるはずだ。
うん、頑張ろう。