第30章 仲直り
「……仕方ない」
スパーン!っと心地よい音をたてて襖を開けると長谷部がいた。
いや、会話していたのだからいるのはわかってはいたけど。
スパーン、と開けていながらなかにはいるとそそくさと襖を閉めておく。
「長谷部。はっきり言うとあれは私が悪い。長谷部を惑わせ弄んでしまったのは私……だから、ここ……グーで殴っていいよ」
長谷部「な、なにをっ!」
長谷部の前に正座して自分の頬を指差すと長谷部は動揺した。
私は彼に平手打ちをして逃げたのだから長谷部も私にやり返すくらいはしてもいいと思っている。
男の人の力だと歯が折れないかな、と心配ではあるが長谷部の心を傷つけてしまったのだ歯の一つくらい抜ける覚悟をしなくては
「さぁ、殴れ」
長谷部「主を殴るなんてできますか!」
「長谷部。私は長谷部にひどいことをしたの……勝手にキスしてその気にさせて叩いて逃げた。長谷部には私を殴るだけの理由があるの」
長谷部「俺は……気にしてません。主は俺のためを思って行動しただけです。それに俺が勝手に……」
「……そんなに私を殴りたくないと言うならせめて償いはさせてください。何でもする、なんて無責任なことは言えません……ですが長谷部が少しでも心の傷を癒せることがあるというのなら私はできる限りのことはするつもりです」
彼らを幸せにする。
無責任な言葉だとは思う。
けど、私は……無責任でも彼らを幸せにしたい、そう思っている。
長谷部は私の言葉に悩んでいるようだった。
私は無理難題でも聞かなきゃいけないことをしてしまったのだ。
それなりの覚悟をしておかないと……