第30章 仲直り
「き、気のせい……と、済ませてもいいのかな」
長谷部「そこにいるのは誰だ!」
「うわっ……さ、さにゅわです!いや主、です」
部屋の前でうろうろしていると中から声がしてビクッとし声が裏返ってしまう。
さにゅわって言っちゃったよ……
長谷部「あ、主…………どうなされたのですか」
あ、開けてくれないんだ。
「……あの、これからちゃんとした主になるべく部屋にこもってやるべきことを片つけようと思ってるのですが、私が部屋にこもっている間は近侍の長谷部さんにみんなのことを頼みたいというか……任せたいのですけど」
いや、違う。
違わないけど違う。
みんなのことを任せたいとは思っていたけどその話よりも先に私は仲直りをするためにここまでやって来たのだ。
話す順番が違いすぎる。
長谷部「主が部屋に……隠居を」
「いや、まだまだ隠居しない。ただ集中するために部屋にこもりたいの……でも、その間も遠征とか任せたいんだけど私が部屋から出るとやるべきことが進められないというか……」
うまく言えないが、私が部屋から出ると誰かが私に構ってくれたりするからついその人と話したり遊んだりとしてしまいそうで……。
今はとにかく仕事だ。
部屋の前でこんな話をするべきではないのだけど……長谷部から開けてくれないと拒絶されているかもしれないことを考えると私からは開けられないのだ。
長谷部「ですが俺は……近侍失格です! 主にあんなことをっ」
あぁ、やっぱり気にしてた。
「あ、あれはね私が原因だから長谷部は悪くないの」
長谷部「いえ、俺が悪いんです!俺が……主を辱しめようとしなければっ」
……ん?
辱しめ、ってなんだっけ。
恥ずかしいこと……?
よくわからないが長谷部は私とのことを心底後悔しているようだった。
私が原因なので長谷部は悪くないのにな……