第30章 仲直り
ほとんど逃げるように部屋から遠ざかる私。
長谷部は気づいてないようだが、やはりあの部屋は……見覚えがある場所であった。
部屋なんてみんな似たり寄ったりじゃない?なんて思いたかったのだがそうはいかない。
あの部屋は……宗三さんと入った部屋だったのだ。
今となってはずっと前の過去の話だと思いたいが一日すら経ってないので、もしバレたらと思うとさすがの私でもドキドキだ。
長谷部とてバカじゃない。
本当は気付いてて気付かぬフリをしてくれているだけの可能性もあるが本当に気づいてなかったからそれはそれで……
「長谷部……ごめんなさい。約束は守るからどうか気づかないでいてください……」
誰もいない方を向いて手を合わせておいた。
ずるいことだけど、気づいてほしくないのが本音だ!
私はもう一度、今度は空の方を見て深々と頭を下げてからお願いをしておいた。
手遅れ感があるが私は立派な審神者として見てもらえるようこれから頑張るつもりなので……でも、隠すというのは宗三さんに失礼なのだろうか。
あの人なら気にしないように見えるけど……本音はどうかわからない人だからな。
「……審神者の力として思っていることが理解できたらいいのに」
彼らの心情がわかれば……いや、もし本当にそんな力があったとして拒絶する彼らを見ていられる自信はない。
私はいつだって……ただの弱い人間でしかないのだ。
「……かっこわる」
そう呟いて、私は自室にへと急ぎ足で向かった。
私はかっこ悪い。
それでも審神者としてこれから頑張ると決めた……決めた、のだ。
必ずやり遂げてみせるからね。