第1章 ケーキより甘い夜
今日はアレクが非番でユリが一人で店じまいすることになった。
ユリがカーテンを閉めたり片付けをしていると、ドアがカランと鳴り、ラッドが入ってきた。
ラッドは仕事の息抜きに、時々お茶を飲みに来る。
「ラッド様! お茶を飲みにいらしたんですか?」
ユリはラッドに駆け寄り、にっこりと笑った。
「ああ、ユリ、いい子にしてたか?」
ラッドはユリの頭をポンポンと撫でた。
「は、はい・・・。すぐにお茶をお持ちしますね」
ユリは赤くなった顔を隠すようにキッチンに向かい、紅茶を準備し始めた。
「お待たせしました、ラッド様。今日はショートケーキが残ってたので一緒にお持ちしました」
ユリがラッドのテーブルに紅茶とケーキをサーブした。
「うちは紅茶の売れ行きはいいがケーキの売れ行きはいまいちだな…ユリはどう思う?」
「そうですか? 食べたことないのであまり意識してませんでした」
「食べたことなかったのか? それは問題だな」
ラッドはユリの腕をぐいっと引き寄せるとユリを膝の上に乗せた。