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真昼の月 真夜中の太陽 【気象系BL】

第11章 世界にひとつだけの花


【明けない夜】







「ユウ!店を辞めるってホントなの?」




その話は、店長に伝えた日から次の日には皆に知れ渡ったみたいで


僕に入れ込んでた客の1人が、形相を変えて会いに来た







「そうだよ。前から、長くいるつもりないって話してたよね?」

「そう、だけど。そんな急に…」

「今までありがとね」





ニコッと営業スマイルを浮かべ、彼女の頭を撫でた


「ユウ…お願い。私ね?本気でアナタが好きなの」





腰に回された腕に力が籠る

きつめの香水に、内心不快な気分になりながら、彼女の腕をやんわりと剥がした






「……ごめんね」

「謝らないで。ねぇ、ユウの時間がある時だけでいいからっ…!」


腕を解いても

彼女は縋るようにまくし立てた






「せめて……思い出が欲しいの」






惨めだな

可能性もないのに……


どうして、僕が好きなら、こんな醜い姿を晒せるんだろう


だけど…そうだね


そんなに僕が好きなら、……証明してみせて?


そしたら、ご褒美あげてもいいよ










「ちょっと、困ってるんだ」

「え……?」

「ソイツ、邪魔なんだよね……」

「ジャマ……?」






弱い頭で必死に考えてみなよ

何かしら浮かんでくるよね?







「いろいろ助けてくれたら、時間…作れるかもしれない」





ニコッと微笑むと

戸惑いを見せ、揺れてた瞳は

ピタリと僕に焦点を合わす




「……ユウ、そいつの事教えて?私、アナタの役に立ちたい」





恋する瞳が閉じられ

キスをねだる







僕は唇を重ね、

開いた隙間に、甘い蜜を流し込んだ

はぁ‥‥っと漏れる吐息は熱を帯び

彼女は恍惚の表情で、

「もっと…、」と先を求める


唇を離し、繋がる透明の糸が切れると


半開きの下品な唇に指先を当てた







「続きは……またね」




コクンと頷き

唇の余韻を確かめるように
そこをなぞる


今までも散々貢いでくれたんだ

僕の為なら、

なんだって嬉しいよね?









例え、その綺麗に手入れされた手が…、


黒く染まろうとも





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