第11章 世界にひとつだけの花
【堕天使のワルツ】
時給だけで選んだ店は、ホストクラブだった
歩合制で、安定はしないものの、実力がすべての世界は、僕には合ってる気がした
家柄も育ちも嘘で構わないからだ
親に愛されない理由でもあった、
女のような顔に感謝したのは生まれて初めてだったかも知れない
笑顔さえほとんど見せない無表情な僕が、
仕事のためだと時折笑顔を見せると
それだけで毎日通う客が増え、
意識して、金を持ってそうな女に優しくした
リップサービスに踊らされるバカな女や
世間知らずの金持ちのお嬢さん
自分の為に金を貢ぎ、
望んでもないのに、僕をトップにしようと飾り立ててくれる
小百合姉ちゃんと安定した生活をする為の資金稼ぎだったはずが、
気付けば、店のNo.1になり、月で稼ぐ額も3ケタが当たり前になっていた
「ゆう…最近、何か変わった?」
「え?…どうして?」
髪型は変えても、色は変えなかったし
服装だって、普段は仕事をする前と変えなかった
ホストクラブで働いてるだなんて、やっぱり知られたくはなかったからだ
「ううん。ただの噂。ゆうがね、その……女の人と」
そろそろ潮時かな
バレたら、元も子もない
小百合姉ちゃんに嫌われたりしたら、僕は生きていけない
「噂でしょ?…僕が、そういうの苦手なの知ってるよね?」
ニコッと笑うと、安心したように笑顔を見せてくれた
「そうよね。ごめんなさい」
「いいよ(笑)」
「心配になっただけ。だって、ゆう…最近、……やっぱりいい」
「なに?」
「……格好良くなったもの//」
少し照れて、はにかむように言ったあなたが
堪らなく愛しくて、
思わず、抱きしめそうになった
あなたが家を出るまでもう少し
もう、時間がない
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