第11章 世界にひとつだけの花
【はつ恋】
神父様がいろいろと手続きや、お父さんとお母さんにも話をしてくれて
僕は、教会に併設された"ひかりの園"で生活することになった
僕より大きな、中学生や高校生のお兄さんやお姉さんがいた
小さな子もたくさんいた
慣れない環境に、緊張もしたし、なかなか落ち着けなかったけど
少なくとも、僕を殴る人はいないし
あったかい布団と食事があるだけ、充分だと思った
「ゆう!……今、帰り?」
ランドセルを背負った僕に、手を振るセーラー服の女の人
「小百合姉ちゃん……」
神父様のひとり娘の彼女を、施設のみんなはホントのお姉さんみたいに慕って、『小百合姉ちゃん』と呼んでいた
「後ろ姿を見掛けたから、追いかけて来たの。…一緒に帰ろうと思って」
「……うん///」
小百合姉ちゃんは、
今まで僕が出会った人の中で、一番キレイで
優しくて……
まるで、マリア様みたいな人だった
「そうだ!ゆう、遠回りして帰ろ」
当たり前に繋がれた手を
ドキドキしながら、ずっと見てた
キレイな横顔を見上げながら、
……離したくないって、思ってた
僕はまだ、
それを"恋"と呼ぶのだと
何も知らない
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