第11章 世界にひとつだけの花
【生きる意味】
・
身体の傷が癒えるまでここで過ごし、僕は自ら帰る事を選んだ
久しぶりに帰ったら、少しは僕を心配してくれてたかも知れない
・
複雑な表情の神父様に頭を下げ
僕は、家に帰った
ギシギシと音を立て、錆びた階段を上り、ドアをノックすると
簡単にドアは開けられ、
目の前には、少し顔が赤いお父さんがいた
「……なんだお前か」
淡い期待は直ぐに打ち消され、俯いた僕に
父さんは『入れ』と隙間を開けた
戸惑いながら入った久しぶりの家は、いつもに増して荒れてる気がした
一升瓶が転がり、缶ビールが積まれ
部屋中、酒のニオイで充満してた
呆然と立ち尽くす僕に、父さんが話し出す
「アイツ、また余所にオトコ出来たみたいだな」
……お母さん?
「ここ何日か帰って来ない」
苛ついた声に、ギクリと体を強張らせた
こういう時は決まって、お父さんは僕を殴る
「ゆう」
キタ、と思った
身体を震わせ、身構える僕に、お父さんの平手が飛んだ
ぶっ飛ばされた僕は倒れ
お父さんが覆い被さる
だけど、来るはずの2発目は来ず……恐る恐る目蓋を開けると
月明かりで見たオトコと同じ目をしたお父さんが、そこにはいた
「ヒッ……!やっ、やだっ」
身体を捻らし、手に届く物を掴み、メチャクチャに投げ抵抗する
蘇る恐怖心
身体を裂くような痛み
あの夜の冷たい空気
「ヤダ…!やめっ…」
口を大きな手で塞がれ、苦しくて息が出来ない
完全に傷の癒えない体に、大人の男に、いつまでも抵抗する力はない
酒臭い息が顔に掛かる
ザラザラとした舌が身体を這う
もう……抵抗する気もなかった
身体を持ち上げられ、何度揺すられても
痛みで壊れてしまいそうになっても
涙さえ、出てこなかった
欲を吐き出したお父さんは、我に返るどころか
動けない僕に、淡々と告げた
「オマエ、稼げるな(笑)……女みたいな顔してるし、金になりそうだ」
どうして僕は、
あの日死ななかったのかな
そしたら、
まだ、"マシ"だったよ
ううん
どうして僕は、
この世に生まれてきたんだろう
誰も
抱きしめてくれはしないのに……