第11章 世界にひとつだけの花
【微かな希望】
「遠慮しなくていいんだよ。……たいした朝ご飯じゃないけどね」
トレーの上に並んだ食事
温かいスープとパン
目玉焼きとウインナー
うさぎのりんご
「嬉しいです。いただきます」
手を合わせて、スプーンを手に取り、スープを口にした
……あったかくて、心がホッとする
あったかいご飯を、給食以外で食べたの……いつぶりだろう
「おいしい、です」
「良かった」
優しく笑う目の前のおじさんに見覚えがあった
マリア像の側に倒れていたということは……
ここは、教会の……
「神父様……ですか」
頷いて、僕を見る眼差しは、確かに前、飴玉をくれた神父様だ
格好が違うから、直ぐに気付けなかったけど
「君は、前に……バザーに来てくれた事があるね」
「はい」
「それなら知ってるだろうけど、ここは施設も併用してる。いろんな事情で、家族と暮らせない子供が一緒に生活してるんだ」
「……」
バザーにいた、同じ年頃の子供達を思い出す
ここの教会の敷地内に、擁護施設があることも知ってる
「君がいいなら、ここにいていいんだよ」
諭すような、慈愛の言葉
胸が突き動かされるのと同時に
僕は、お父さんとお母さんに、ホントに捨てられてしまったのか?
昨日は、おつかいさえ出来ない僕を怒っていただけではないか
イイコにしていたら、いつかは抱きしめてくれるのではないか、
いろんな想いが巡って…、神父様の言葉に、頷く事は出来なかった
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