第58章 初恋の再会
––笠松side—
ダメだっ……
どこにもいねぇ……
こんなに探していないってことは…
この公園にいないって事か…
園内を探し回っても聖知の姿はなく、花宮に連れ去られたのではないかと嫌な考えが脳裏によぎる。
自身の嫌な妄想を払拭するように頭を振り、再び探そうと離れようとした瞬間、奥の方で微かに壁を叩くような物音が耳に入る。
「こっちは確か……」
『整備区間』と張り紙がされて、古い建物が複数並んでいて主に公園を整備するための道具や敷石やセメント類などが小屋の外に乱雑に配置されている。
こんなとこに聖知がいる確率は低い…
他を探した方がいい…
頭の中で自分に言い聞かせながらも歩みを進めていく。
もしかしたらここに聖知がいるかもしれない
そう信じて
この時の自分の勘に心底頼ってよかったと実感した。
「聖知ちゃん、まさか逃げないよね…逃げたら…どうなるか…」
「っ……!」
奥に進むに連れて聞き覚えのある声を耳にする。
忘れるはずもねえ…
さっきまで俺を監禁していた花宮の仲間…原だ
バレないように盗み見ると聖知の姿も確認でき、すぐ助け出したい気持ちを抑えながら状況を観察した。
原と対峙している聖知は顔色が悪く、原が近づくたびに距離を取って逃げるのを躊躇しているように見える。
「っ…聖知ちゃんっ…俺のことは気にせず今すぐ逃げるんだっ…」
「無理無理…1人で逃げるような卑怯な事…できないもんね〜」
他に誰かいる
誰だかわからねえ…状況もいまいちわかんねえけど…
一つだけわかった
聖知の優しい心につけ込んで卑劣に脅迫するような奴から一刻も早く助けだす
今の俺にはそれしか頭に入らなかった
「卑怯なのはお前らだろ」
原が聖知に触れようとした途端、手を払いのけ、片手で聖知を抱き寄せ相手から遠ざけるように後ろに隠した。
聖知の身体は片手越しでもわかるくらい震えていた