第58章 初恋の再会
––氷室side—
「……敦…」
「ん〜なぁに?」
「…本当に聖知ちゃんは後で来ると言っていたのか…?」
「室ちん…ソレ…聞くの何回目?」
お菓子を買いにコンビニに行った敦から「聖知っちんにさっき会った〜」って聞いた時一緒に行かなかった事を心底後悔した。
時すでに遅く、ストバスの試合時刻が迫っていて彼女がこの場に訪れるのを今か今かと待ち焦がれていた。
しかし…聖知ちゃんがが現れる事はなく…何度も敦に聞いたが「そのうち来ると思うよ〜」しかわからなくて焦りを感じる。
「もう最終試合だから……あれから時間がかなり経っているし…心配でね…」
「さぁ〜そのうち来ると思うけど…」
「……そうか……」
敦からは高校の先輩と一緒に此処に訪れていたという話を聞いた。
その先輩とはどんな関係性なのか…正直気になるところだが…
今は1秒でも早く聖知ちゃんに会いたい
会って話がしたい
きっと一目で見ればすぐわかる…
早く彼女に会いたい気持ちから心を落ち着かせよう深呼吸をする。
彼女に会えても慌てふためく姿は見せたくない。
試合にも影響が出るかもしれない。
気持ちを落ち着かせるために、ふとバスケコート外の観客に目をやると1人の女の子から目を離せなかった。
「…………敦…少し外す…試合までには戻る」
遠巻きからでもわかる。
長い髪に清楚な出立ち…何より、6年前と変わらずワンピース姿だった事が幼い頃の俺の記憶とリンクして頭が…記憶が…彼女が聖知ちゃんだと言っている。
試合までにはまだ少し時間があり、敦に用件のみ告げるとバスケコートを出て彼女の元へ急いで向かった。