第58章 初恋の再会
「ぐッ…!」
「謝ってくれないかな…彼女に」
氷室は壁に押し付ける力を強めると花宮は予想以上の相手の力に苛ついたように唸り声を上げる。
「っ…寝言は寝て言えよ… バァカ……それよりもいいのかよ…お前が離れたら…」
「……っ…!」
「…原、今度は逃すなよ」
「それ、花宮が言う台詞?俺は聖知ちゃんの事、逃したことないし♡」
馬鹿にしたように氷室にそう告げると、花宮の仲間である原が氷室が離れた隙に聖知へと近づいていた。
その様子を見てすぐに聖知に駆け寄ろうとするが、胸ぐらを掴んでいる手を花宮にさらに強く引っ張られ聖知の元に行くことができない。
「っ……」
「聖知ちゃん、まさか逃げないよね…逃げたら…どうなるか…」
原が近づく度にに聖知は後退る。
走ればすぐ逃げられるのに、助けてくれた本人を前に1人で逃げ出すことができず脅迫めいた言葉に徐々に歩みが止まる。
「っ…聖知ちゃんっ…俺のことは気にせず今すぐ逃げるんだっ…」
「無理無理…1人で逃げるような卑怯な事…できないもんね〜」
花宮の強い力からなかなか振り切ることができず、聖知に逃げるように催促しても動かなかった。
花宮は勝ち誇ったように笑むと同時にそれは突然起きた。
「卑怯なのはお前らだろ」
その声の主は、原が聖知に触れようとした瞬間その手をバシッと払いのけ、片手でしっかりと聖知を力強く抱き寄せた。
「っ…笠松先輩っ……」
安否が分からず、ずっと会いたくて焦がれていた笠松が目の前にいて聖知は安心したように涙が溢れさせていた。