第58章 初恋の再会
花宮が聖知の髪を強く引っ張った瞬間、それは突然起きた。
「っ……お前…誰だ…」
花宮の手首を誰かが強い力で捻り上げ、鷲掴みにしている髪を離させると、突き飛ばすように聖知から退かせる。聖知を庇うように立ちはだかる姿に花宮は眉を顰める。
「I don't feel the need to introduce myself to you. Get out of here now.」
(君に名乗る必要性はない。今すぐここから立ち去ってくれないか。)
花宮をキッと睨みつけそう告げると、聖知の方へ向き、側までくるとしゃがみ込む。
「…あ…あの…… 」
「久しぶりだね…聖知ちゃん。」
「っえ……な…なんで私の名前……」
突然、初対面同然の相手に名前を呼ばれ聖知は驚く。
聖知が驚いた表情を浮かべると、助けに入った彼は少し寂しそうに笑いゆっくりと自身の名前を告げる。
「氷室辰也…6年ぶりだから…忘れても無理はないかな。」
「………6年ぶりって……っ…危なっ…!」
「………」
氷室はゆっくりと聖知に手を差し出し、ゆっくりと立ち上がらせる。
聖知が詳しく話を聞こうとした瞬間、突然氷室目掛けてバスケットボールが飛んできた。
聖知の声が重なると同時に片手でバスケットボールを受け止め、ボールを投げてきた張本人である花宮を睨みつけた。