第58章 初恋の再会
––聖知side—
「……あれから30分経ったけど…まだ見つからないのかな…幸男さん…」
桐生に言われるままイベント会場で待っているけど…時間だけが過ぎていき不安がどんどん募る。
待っている間に幸男さんのスマホに電話をかけてみたけどやはり繋がらない。自分で幸男さんを探しに行こうと考えたけど桐生の言葉に躊躇してしまう。
『私の知ってる笠松様なら…お嬢様が危険な状態に陥る方がご心配されると思いますが…』
「幸男さん……」
無事を祈るようにそっと名前を呟くと、ふと私のスマホに幸男さんから着信が入る。
「っ…!もしもし…幸男さん無事で…」
「…………」
「幸男さん……?」
幸男さんからの連絡だと思いすぐに電話出る。
でも、何度呼びかけても幸男さんからの返答はなかった。
幸男さんの声はしないけど、何か雑音が入り混じって何かが聞こえる。
人ごみが多くて音が聞きづらいため、イベント会場から少し離れた場所で電話を再度聞こうとした瞬間それは起きた。
「っ……!んんっ…っ…!」
「あーあー残念だったね…聖知ちゃん♡さっさと先輩なんて置いて逃げればよかったのに…」
後ろから腕と口をいきなり押さえ込まれ、園内の人気ない路地へと引き込まれる。背後から小屋に拉致した時と同様、原と呼ばれる男の声がして、抵抗しても強い力で押さえ込まれて、何もできなかった。
路地の奥には、幸男さんのスマホを片手で弄び、冷酷に嘲笑したような笑み浮かべている花宮がいてゆっくりと私に近づいた。