第1章 泣き虫な子。
「えっ、誰か、いた、んだっ」
ナルトの口元を塞ぎ首を降る。
涙が落ちた。
「違いますよ、少し待っていてください」
「……」
頷くナルトを見て走って部屋を出た。引き出しから部屋着を引っこ抜き、タオルを片手に足早に浴室に向かう。
ノックをして俯き、息を整える。
「失礼しました、申し訳ございません」
「……誰か来てるみたいだね」
「私の友人が…申し訳ございません」
「……そう」
「…失礼しまします。」
床を見ながら話し続け、ゆるりと踵を反したつもりが、いつの間にか早足に茶の間に戻っていた。
戸を開けるとナルトが変顔をしていて、不意打ちで笑ってしまう。
「ぶっふふふ、あはははっ」
「は笑ってるほうが俺は好きだ…から、その事情はよくわかんねぇけど…」
「私、ナルトとの夕食や時々お外に誘ってくれるのもとってもとーっても楽しいんですよ」
一日中部屋に居ると頭がおかしくなる。
ナルトに飛びつくと箸を持ったまま押し倒してしまう。それでも、ぎゅっと、抱きしめた。
いつの間にか、自分が自分じゃなくなってくのが苦しかった。
ぐすりぐすりと声を殺す。
「ナルト…………友達って、いってくれる?私の事を」
「友達だってばよ……大切な」
「っれしぃ……また、ご飯食べにきて、くれる?」
「来るってばよ…だから、そんなに泣かないでくれ、な?」
優しく頭を撫でられ、泣き疲れて指が心地よくて嬉しくて悲しくて眠りについた。
しゃらんと、足首の鎖は冷たく揺れていた。