第2章 愛してもらいたかった。
同情だったのかもしれない、そんな気がしながらもふと思い返す。
謝るアスマと紅に寄り添いそばにいたいと言う声。
ご飯を食べ終えるととろとろと仕事の準備をする。
「遅くなるからちゃんと食べてるんだよ、先に寝てていいからね」
『はい、わかりました。お気をつけてください』
声が聞こえてきそうな気がした。
じっと見つめる彼女を見て、いってきますと言い家を出た。
お弁当を持たされていた、当たり前のように食べていた。
当たり前のように用意されていた、当たり前。
へとへとで帰宅したのは二日後、流石に疲労も溜まり一日の休暇をいただきアパートに戻る。
そこには何故か紅が居た。
アスマまで。
目を丸くして一瞬部屋を間違えたのかと思うが、紅の膝には彼女が顎を置き寝ていた。
「勝手に上がらせてもらってるぜ」
「なに、どうしたの」
「いや、こいつどーせなんも食ってないだろうなって紅が」
大人しく頭を撫でられている様子を見て眉間を寄せる。
「静かにして、やっと寝たんだから」
紅の隣には、ご飯に牛乳を混ぜたものが置かれてあり少し減ったような形跡があった。
「人の食べ物なんてもうこの子は口にできないのよ」
「…」
「もし食べさせるように戻したいのなら少しずつじゃなきゃね、それにこの子…いえ、なんでもないわ」
「気になるでしょ、そうまで言われたら」
紅は彼女の額にキスをすると、むくりと顔をあげて頬をぺろりと舐めていた。
「人の姿を忘れたんじゃないかしら」
鼻の先を合わせて彼女は満足げに再び膝に顎を乗せていた。
その言葉に何故か納得してしまう。