第14章 懐かしさと。
そんな光景を見て綱手は静かに部屋を出た。群がる馬鹿どもを見て額を抑えたが、そっとしてやれと言って茶の間に歩く。
此処にはダンゾウより、あの相談役共より、厄介な男が居たなと思い出す。
「はぁ、何故あの男なんだ」
額を抑え空を見上げる。
まんまるいお月様。
「⋯⋯、何かありましたか?」
大人しい声に混ざる探りの心。
優しい瞳に反して、残酷な笑顔。
綱手は腕を組んで深くため息をついた。
「産まれた」
「へ?」
「あぁ⋯とカカシによく似て⋯やんちゃになるだろう」
「え?おんなの、こ??はずっと教えてくれなかったんですよ」
この男でもについて知らないことなんかあったのかと、思いちらりと振り返る。
が、その瞳を見て眉間を揉む。
知っていたろう。
「は⋯」
「あの子は男の子を選んだのですね」
あの娘は、もうきっと人を馬鹿のように愛さない。
こっちが困るほどただ、真っ直ぐでは居ないだろうと感じた。
あの子の言葉を思い出す。
『大丈夫です、里の役に立つのなら』
苦しんでいた。
何も思い出せてない癖に。
苦しんでいたのだから。
「綱手様⋯よろしくお願いします」
頭を下げたサクモに綱手は眉間を寄せる。
「当然だ」
いつか、きっと。
家族として、迎え入れる時が来ますからと、あの子は微笑んでいた。
産んだ直後あの娘は決めた。
『おんな、のこ、だから⋯』
護ってと、あの子は泣いていた。
思い出すたびに胸が苦しくやるせない。
「どういうつもりか知らんが、何故お前は⋯」
「それは勿論、貴方と、息子に腹が立っていたのもありますよ、だから、責任をとってもらおうと」
まともに話しが出来てる気がしなく眉間を寄せ首を降る。賑やかになるであろう我が家を思い浮かべ早足にサクモ邸を後にした。