第1章 泣き虫な子。
「アスマ!!」
「ってぇ…そいつ、人間の姿にならねぇのかよ」
「なれないのよ、もう何年もろくな食事食べてないもの」
紅が頬を撫でるとむくりと、起き上がりベッドの上にちょこんと座る。紅の指を舐めてか細く鳴いたが不安を煽るだけだった。
「ご、めんなさいっ、、ごめんなさい」
金色の瞳の狼は優しく紅の膝に擦り寄る。膝に頭を乗せて目を閉じる。
これだけあればいいと、言わんばかりだった。
翌日から動物病院に連れ行かれ少しずつ歩けるようになっていった。
紅の傍を歩き、離れず。
立ち止まれば止まる。賢い犬のようだった。
「紅…?帰ってたのか!」
「えぇ、三年もとか聞いてないわって感じよ」
「長かったな…まぁ、お疲れ様」
「ありがとう、もう暫くはゆっくりさせてもらうわ」
カカシはちらりと足元にぴっとり寄り添い座る狼を見る。
「犬なんて飼ってたっけ?」
「狼よ、この子がずっと傍に居てくれたから頑張れたのよ、ねー」
わしゃわしゃと顔を撫で回すとぺろりと頬を舐める。
「……?」
「ええ、店主はそう呼んでたわ。なに、まさかアンタのとか言わないわよね?」
「…………いや」
くりんと金目が光る。
艷やかな藤色の毛。背中を撫でる紅に擦り寄っていた。
「びっくりしたわ、人狼を買う趣味があるのかと思ったわ」
「ぇ?いま、なん、だって?」