第14章 懐かしさと。
「雨の記憶に比べたら最近の事なはずなんですが⋯」
「その誰かはどんな人だったんだい?」
「同じく顔とかは⋯ただ、優しくて、夕食を食べて優しくキスをしてくれて、愛してるよと言ってくれたのは覚えているんです」
嬉しそうに。
胸を抑えて微笑む。
「私も、その人を愛していたんですよ」
ぽろり。
涙が零れた。
「な、な、えっ、んっ、な、なぜ涙が零れるのっ、さ、サク、モさん」
「落ち着いて、」
いい子だと、マフラーをしっかりと顔に寄せて微笑む。
「ぁ、ぁあ、私、旦那様が、大好きで、大好きだったんです、それで、それで、でも、旦那様は、っ、サクモさんの、息子で⋯でも大好きで、怖くて、とても、とても、幸せで」
「うん」
「でも、だから、だめで、私が⋯⋯私が弱虫で、逃げて、沢山たくさん一人にさせて傷つけて⋯それでっ」
頭を抱えてしゃがみ込む。
ダンゾウが、生半可な術をかけるわけがない。ましてや、愛しの娘だ。
すっと、視線を合わせるようにしゃがみ込む。
「、落ち着くんだ。」
「わた、し、外が怖いのです⋯だって私は⋯人ではない⋯だから」
「戦うのだろう?」
は目をまんまるくして涙を流していた。
「はい⋯そうです、はい、私は⋯失わないために、護るために、生きるため戦うのです」
その答えに膝をつきふわりと抱きしめた。
「僕はね、。泣き虫のままの君もとてもとても愛おしいと思うよ、泣かないことが強さじゃないからね。君は優しすぎて、大切をちゃんと理解してる立派な人だよ」
ぐらりぐらり、ゆらりゆらり、思い出される。小さな欠片達。
大きな塊になって行くのがわかる気がする。
溢れ出す感情。
サクモは、知っている。
彼は、唯一の⋯⋯⋯。