第14章 懐かしさと。
「ふん!」
朝早く、縁側で何やら体をゆるりと、動かすを見てサクモの欠伸も止まる。
「⋯お、はよう」
「あぁ!サクモさん!おはようございます!とてもいい朝ですね」
「⋯⋯あ、あぁ、散歩にでも行きたい朝だね」
「それは名案です!散歩に参りましょう!今仕度を整えて参ります」
「あ、うん⋯」
いつものなら朝は眠いと言うのに、どうやら元気な姿に拍子抜けする。
うなじをぽりぽりとかきながら、空を見上げる。
ふ、と笑がこぼれた。
あの子はこの空を見たかったのだろうか。
藤紫に輝く朝日を。
秋も終盤だ、冷え込みが厳しい。
ストーブを出さねばと反省しながら部屋に戻り寝間着を脱ぎ捨て外着を着る。上着を着て、ふと、視線には息子が幼い頃使っていたマフラーが目に止まる。
あぁ、には丁度いい。あの子はそういう所に疎いから。
そんなことを思いながらマフラーを片手にのろのろと部屋から出ると茶の間には姿が見えず首を傾げる。
「ー?」
呼んでみる。
「玄関におりますよー!」
随分せっかちなものだ。いや、あの子は外が大好きだった。
そんなことを思いながら、今行くよと声をかける。
小さな巾着には少しのお金を手に。
玄関に向かい驚く。
彼女もまた、手にはマフラーを。
そして巾着を持っていた。
「あら、サクモさんにと思ったの、」
「僕も、にと思ったんだけれど⋯」
顔合わせ笑ってしまう。