第13章 強さ。
私は沢山の人を子供を大人を殺していた。
なのに、赤の他人の赤ちゃんがこんなにも可愛いと、愛おしいと感じたのは初めてだった。それと同時に人殺しという言葉が凄く重いものだと知った。
綱手様は、忍なら、人なら誰もが抱える重さだと言ってくれた。
家庭を持っても、英雄も皆そうだと。
人を殺して誉められても、殺した人には家族があり、恋人がいる。だから、無闇な殺生はいけないと。だが、そうしたことをする事で、守られてるものがあるのは事実だと。
赤ちゃんのお母さんに人狼なんだろう?と言われてドキッとした。
産まれたらどんな子か、見せてくれと言われて戸惑う。
どういうつもりだと、綱手様が怒るがお母さんはあっけらかんとしていた。
人狼は美人が多いから、その赤ちゃんの顔も興味があるんだと。
くだらんと一喝していたが、何故かそんなに不快感が無かった。
犬の赤ちゃんかもしれませんよ、とぽろりと出た言葉にお母さんは納得していた。
どっちにしても、楽しみだね。
その言葉を聞いて何故か涙が出た。
頑張るんだよ、お母さんなんだから。
そういわれて、あぁ、母親は、強い生き物だと初めて知った。
「んむぅ⋯きっと、かー⋯いーの」
産もうか、産むまいか。
悩んではいる。
火影様が言う通り、いつか、この子が自分の足枷なる時が来るだろう。
その時、後悔するぐらいなら⋯私は産まない方がいい。
そうは思っても、きっと。
きっと。
戦うと決めた時から半分以上決めている。
だって、仕方ないじゃない。
そうよ、火影様が言う通り、情とやらが、きっとこの子の顔が見たいと思わせているのだから。
だから、戦うわ。
人の子にはなれない、でも、人狼だからと言って蔑まれて仲間を悲しませたくない。
「んー!つよーいーーー!」
愛してるの言葉の意味が解けたら。
きっと伝えたい人もわかるはず。
「つよーーーーいの⋯です⋯ふん⋯」
「お前は本当に困った息子だよ」