第1章 泣き虫な子。
「お、っと、暴れない、暴れない、イイコにしていてね」
背中に男が乗る感覚に暴れ回る。
紐が首にくい込み、苦しくて、苦しくて。
涙が出た。
「なんで、なんで⋯いたい、ことするの」
背を丸め前足で顔を隠す。
「くるしい、よぉ」
その声は、小さな小さな子供の声。
男は驚いた。
男の身長より大きい狼だ、成熟しているものだと思ってしまっていた。
だが、狼は震えていた。
それは、怯えて、痛みで、苦しみで。
その声にはたけサクモは驚く。
「君は⋯⋯」
「痛いのはいやだよぉ」
お腹がすいた、喉もかわいた、くるしい、身体が痛い。私悪いことしてないのに⋯どうして?
「あぁ、そうか、そうだね、そうだったね、僕は何か勘違いをしていたみたいだ」
そう言って背中から降りた男は、手に持っていたあまいかおりのものを差し出す。
狼はビクビクとしながら、それを自分の元に弾き、距離を取り座り込む。
しゅるると、小さくなり現れたのは小さな小さな幼子。
両手でパンを掴んで涙を両目に浮かべ一心にかぶりついていた。
服も纏っておらず、藤色の髪の毛をした幼子。
その子の身体には噛まれた跡や引っ掻き傷が多々あった。
あぁ、そうだ。
この子はカカシと同い年だった。
そうだ、そうだった。
涙が出そうになる。
ゆらりゆらりとその娘の前に行きしゃがみ込む。
「___……」