第10章 狼と狐と。
お風呂に入って上がると珍しくはベッドに伏せてうたた寝をしていた。
窓の外には黒い服で夕方居たお面とは違う奴が窓の縁にしゃがみ込んで居た。
むっと眉間を寄せると、シーッと指を立てるのを見てそろりそろりと歩く。
そいつの手はの髪の毛を優しく優しく腫れ物のように撫でていた。
何処か愛おしげに、悲しげに撫でる
テーブルにあったグラスを手に取るとカタンと音がして黒い奴はいなくなる。
は目を覚まし、少し寝てしまいましたと言っていた。
すんっと鼻を窓の外にする。
「どうしたんだってばよ」
「いえ⋯誰か⋯あぁ、窓開けっ放しだったんですね!湯冷めしては大変です、ささ、髪の毛を乾かしましょうか」
はそう言って少し嬉しそうに、ドライヤーを手にしていた。お水飲みましたか?など聞いてくる。
そう言えば、婚約者がいるんだったと思いながらさっきの男を思い出す。
「はなんで婚約者?と離れ離れなんだってばよ」
「そうですね~それは、私の婚約者様がとてもとても里にとって重要な方だからですよ」
「へ?それってスゲーつえーってこと!?」
「そうですね、ですから、私なんかとの婚約はよく思われていないのですよ」
「⋯でも、は好きなんだろ?なんでそんな意地悪するんだってばよ」
「ふふ、皆里の為なのですよ」
「里の為なら何やっても許されるのかよ⋯」
はワシャワシャと髪の毛を乱す。
「そんな事は言ってはなりません、忍にも沢山の形があり守り方があるのです。そういう言い方は私は好きではありませんね」
「だって、だって⋯里のためならが悲しんでも仕方ないって事だろ?可笑しいってばよ」
「⋯ナルト、私は里のものではありません、化け物なのですよ、忘れてはいけません」
「そんなん!そんな事言うのはダメだってばよ!!!」
振り返りを見ると、悲しげに微笑んでいた。
「この里の偉いやつがそう決めたなら俺がその里の偉いやつになって変えてやるってばよ、だから、そしたらもうそんなこと絶対に言わせないってばよ!!!」
変わらずナルトは優しく嬉しい暖かい言葉を掛けてくれる。
嬉しくて抱きつく。
「本当にいい子だわウチの子は本当に⋯!」