第7章 恋をした。
昼間にお酒を口にしながら洗濯物を干すを眺めていてどれだけ満たされ幸せだったか。
藤の木の下で本を見つめ、藤をみつめる姿がどれだけいとおしいと感じたか。
嫉妬したのもきっと自分が最初だろう、ずっとずっと大切だった。
当然傍にあるのもだと思った。
「…向き合うって…約束…」
地面がふわりと揺れる。
立っていることもままならなくなり、目を閉じる。
そこにはいつも、白く大きな牙を向けた狼がいる。
手を差し伸べると大きな手が一歩進んでポシェットに手を入れる。
一瞬瞳を大きく輝かせ、口を閉じる。
「━━━━…」
何かを言って再び牙を向けるからクナイを手にする。
けれど、目の前には父がたっていて優しく頭を撫でていた。
「そんなに悲しいならもう、牙を向けなくていいんだよ」
「もう、だれも…傷つけ‥たくない、の」
「うん…」
「誰にも、ひどいことされたくないの」
「そうだね…」
「旦那様にいつか、愛されたいの…」
「きっと叶うよ」
「叶わないってわかってるもん…わかってる…わかってるから…サクモさん…少しだけ、休ませて…」
人の姿になった彼女は父親の腕にうなだれ眠っていた。
いつか、自分もそうしたいと祈っていた。
願っていた。
決意していた。
「いいんだよ、カカシお前はそうして守っていくんだから」
守れなかった。なにも、
一度も、
だれも
何一つ守れなかったんだよ。
それでも彼女はいつも寄り添って、笑顔でいたから。
うぬぼれていたんだろうね。
時にはもどかしさの八つ当たりをしていた。