第7章 恋をした。
ぽたり、ぽたり、と歩く度に血が流れ、その光景をみて心臓が締め付けられる。
『旦那様、おかえりなさいませ』
何度もそれを見ていた気がする。
『人殺しはどんな世も求められますから、明日から私と貴方は他人です。』
『度重なるご迷惑をお許し下さい』
『はい、ありがとうございます』
『素敵だと思います、はいっ!』
『ジんろ、うは、ヒと、とドウ、トウになレナ、イ』
『まぁ!私の旦那様に!?本当ですか?お世話になります、カカシさん。末永く宜しくおねがいします』
幸せになれない。
だから何度も何度も。
死にゆく。
目の前から消えていく。
聞きたかった。
ずっと聞きたい言葉があった。胸の奥につっかえて一度も言えなかった。
そう、自分が誰を好きでもそばにいて、暖かく部屋を照らしいつも笑顔がそこにあった。当たり前の笑顔、優しく見守ってくれた。その笑顔がなにも自分には求められていないと知ったとき、どれだけ、悲しく思えたか。
どれだけ辛く感じたか。
彼女は分かり合うことも、分かち合う事も望んでいないと知ったとき。
「…」
胸が気持ち悪くなりめまいがする。
『申し訳ございません、旦那様』
その言葉ばかり言わせていた。それを当然だと思っていた。
けれど、ナルトに笑いかける彼女は無邪気で、イタチと寄り添う彼女は儚げで、紅の傍にいたいと願う彼女は一生懸命だった。
どんな小さな願いも叶わず、いつも死んでいく。
悲しげに微笑んで…
視界がゆがんだ。
父が死んだ世界で、は一人でいつも微笑んで傍にいた。
は微笑み殺した俺の傍に居て支えてくれていた。
いつか、一度だけ一度だけ心が少し通った。
『、それでもちゃんと向き合うよ。お前は人狼で、主従関係がと言っても、俺にとっては奥さんだから』
彼女は疑わしいと視線を向けて、いいからと背中を見つめていた。
揺れる白い髪の毛をみて、少しでいいからほんの少しずつでいいから彼女を支えていきたいと思っていた。
あの日、微笑んで俺とリンを素敵と微笑んだ笑顔が可愛らしく本心のあこがれでどれだけ苦しく悲しかったか。だから、向き合うことを決めた。
「…」
消えていった白にどれだけ悔しく、森の中で死んでいた彼女をみてどれだけ無力感を感じたか。
大切になっていた。