• テキストサイズ

【彩雲国物語】彩華。

第4章 彩花。


しがみつき警戒する静蘭。月は面白そうにしていた。
 「千代、実は⋯」
 邵可が口を開くと栗花落の怒鳴り声が聞こえる。静蘭がぎゅっと抱きつき後ろに隠れた。
 彼が来ているのだと知る。
 席を立ち静蘭を引きずりながらフラリフラリと廊下に出る。
 ほら、栗花落を困らせている王がいた。
 「王様、栗花落様を困らせてはなりませんよ」
 「⋯久しいな」
 「はい、お久しぶりでございます」
 「⋯⋯藍家に嫁ぐのか」
 「まさか、こんな妖怪等娶るのは貴方様ぐらいですよ」
 くすくす笑う。
 撫で撫でと、静蘭の頭を撫でる。
 不安なのか痛いぐらい抱きしめられる。
 「何だそれは、新しい腰巻か」
 「⋯帰りますよ。随分と私は仕事をサボっていた様ですからね」
 くすりと笑いながら千代は静蘭と声をかける。
 「さぁ、帰りましょう」
 「千代」
 少しだけ老けた王を見て微笑む。
 あぁ、とても綺麗に年を重ねている。
 「はい、王様」
 「⋯⋯⋯いや、いい」
 「ふふ、はい」
 愛おしい人。
 貴方様の側には大切な人がちゃんと生きてる。貴方が与えたかった姿で。
 それ等をすべて見守れてとても幸せなのよ。
 ふわっとした感覚にうまく歩けなかったのだと気がつく。
 傾く体を静蘭が引っ張ってくれたのだろう。力の入らない私の手はするりと解け、苦笑いをした。
 身体が熱い。
 「母上!!」
 「どう、し、八千代!!!」
 雪が見えて駆け寄るのが見えた。抱き上げられ目を丸くしている。
 「随分と熱があるな」
 「そう、なの、?何だか、気が遠く、なる、のよ」
 「⋯玉華、水を寝室に、このままで下山は出来ないよ。また、雪山で眠りたいのかい?」
 眉間を寄せる雪。
 ああ、あの白黒の生き物にかこまれて眠るのは嫌いじゃない。
 「ふふ、いいかもしれませんね」
 遠ざかる意識の中で、雪は君はどうしようもないなと言っているのが見えて目を閉じる。
 熱い、身体が熱いの。
/ 189ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp