第10章 彩稼。
「うん、私は二人は愛し合っていると思っていた。千代は、そう見えるように私が不思議からないように、戩華を動かしていただけだった」
「⋯⋯⋯⋯」
「それでも、私は信じてた。戩華は千代を愛していると。」
「⋯ちゃんと愛していましたよ父は」
「千代には、そんなの関係無かった。」
蒼姫は少し心当たりがあった。
母は、父より⋯思いたくなかった。
「藍家の三人にお前を自慢して、それを千代に話す目論見だったのだろうね、まぁ、知ってか知らずか本当に、千代の大切なものを持って帰ってきたお前はお手柄だよ」
「でも、母が居なければっ、千代母様が居なければなんの意味もありません」
栗花落は蒼姫を抱きしめる。
「あぁ、全くだよ。千代はね、千代が今まで生きていたのはね⋯戩華に褒められたかっただけなんだ。」
「っ!」
「戩華は千代を褒めたりはしなかったろう?」
「⋯はい」
「それが、戩華の我儘すぎる愛だったんだよ」
千代のように上手くいかない。栗花落も、蒼姫もそう思うばかり。
千代の話をできる人もいない。
「栗花落⋯私はどうして⋯母に嫌われてるのですか」
本当は父の子ではないのですか?とまゆを下げる蒼姫を見てクスクス笑い床に座る。
「お前の父は戩華さ、母は千代、お前の名付け親は旺季だ。戩華と民に望まれたのがお前だよ、蒼姫」
「っ!」
「私もそれに加担した。千代は断固として子供は要らぬと言っていたからね」
「それでも、それでも産んでくださった!」
栗花落は困ったように笑いながら蒼姫の髪の毛を撫でる。
千代によく似ている。
髪質。
瞳。
「いいや、千代を瑠花姫と監視して産ませたのがお前だよ。」
「⋯あ、ぁ、あ」
「お前を愛することは無い、だから、旺季やお前の兄や戩華は千代に愛してもらったようにお前を愛しているんだ」
勿論私もだよ、と言えば涙を落とす。
父は優しく、母は私等見向きもしなかった。まるで他人。
劉輝兄様はとても優しく、栗花落様も本当に優しかった。たまに服や簪を下さる旺季様。私は、だから、平気だった。
「きっと、千代は君を愛していたよ。あの娘は不器用だからね」