第2章 出会い
女のその言葉で、俺はあの痣が誰に付けられたのかを、何となく理解した。
親?
兄妹?
それとも恋人?
ここに来た経緯は覚えていなくとも、自分の家がどんな場所なのかは覚えているみてぇだ。
なんにせよ、ミサキのこの姿を見て、そんな酷でぇとこには帰らさせる訳にはいかねぇ。
さっき出会った、不審者極まりない女相手に、俺はなに考えてんだかな。
どうしちまったんだ、俺。
「分かった。帰らせねえ。でも、お前を隠す事は出来ねぇから、今から行ったところにいる人間には、お前は名前以外何も覚えていない事にしろよ。」
宥めるように言うと、ミサキはビックリしたような顔をして俺を見た。
栗色の大きな瞳からは涙が止まり、俺と酷似した色の、女の長い髪を、風がサラサラと流す。
どれが正解かなんて俺には分からねぇけど、何故か放っておけねぇんだ。
「あと、ここは訓練所だ。同じ訓練兵になるんだったら、家には帰る必要ねぇよ。俺も極力は庇ってやるから安心しろ。」
そうは言ってはみるものの、俺に出来る事なんか雀の涙程度だけどな。
自嘲気味に目を細めて笑うと、ミサキの温かくて小さな手が、再び俺に触れた。
『ありがとう……ジャン』